OCTAVEプリメインアンプのフラッグシップV80SEの大成功を受け、人気のV110を更に改良するためにOctave Dynamic Technologies (ODT)を採用することは実に合理的な判断でした。ODTのアイデアはJubilee Mono SEに初めて搭載され、その後MRE220モノパワーアンプにも組み込まれました。MRE220の性能は新しい技術からの波及効果を大いに受けており、継いでV80SEにもODTを採用、プリメインアンプにもそれらを落とし込みました。OCTAVEのラインナップの強力なプリメインアンプであるV110は、進化のセカンドステージと言うべき今回を迎えるにあたり、長年の経験と絶え間ない開発から多くの成果を得ました。
ODTの技術的本質は、非常に高いダイナミック出力の獲得です。そのため、新規開発されたKT120またはKT150出力管がこれらモデルの特徴となっています。リファインされた電源部と新しい出力トランスと共に、従来のプッシュプルアンプと比較して倍増されたピーク出力を実現。出力管をモニタリングしながら駆動するドライバー段も一新され、プッシュプル原理の理想にさらに近づく大きな一歩を踏み出しました。誤解されることの多いネガティブフィードバックは音響面に一切の影響を及ぼすことなくその役割を極めてよく果たします。新しいアンプ群は徹底的なリニアリティー、著しく増加した安定性、そして何より、デバイスの制約を全く感じさせない高S/Nを実感できます。全てのODT搭載型のOCTAVEモデルはスピーカーのタイプに関わらず、常に負荷に影響されることなく同じ高性能レベルを保ったままの再生が可能です。正確なトーンバランスは大音量レベルでも維持されます。
世界でも類を見ないゲイン/ダンピングファクター調整機能
新しいV110SEはOCTAVE製品の中でも初の試みである特別な機能を備えています。それは設計原理に関係なくどのスピーカーにもアンプを最適に組み合わせることが可能なものです。V110SEのダンピングファクターは3つのレベル(LOW、MED、HIGH)に設定可能で、今まで以上にスピーカーの電気負荷をより正確に調整することが出来るようになりました。それ自体が世界でも類をみず、これまでのOCTAVE同様、簡単な操作で行えます。個々の設定は異なるゲインの真空管を経由して行われるため、3種類の設定は入力管を1本交換するだけで簡単に選べるのです。「ゲイン/ダンピングファクター」の調整に使用できる真空管は市場にある膨大な種類の中から選択が可能です。
V110SEには、上述の微調整を可能にするための入力管が2本、付属されています。
工場出荷時は標準仕様の「MED」に設定されています。この設定は、例えば中域でインピーダンスが増加するカーブを持つ大きなミッドレンジドームが搭載された現代のスピーカー(一般例としてB&W/800シリーズモデル)を完璧に制御するのに十分です。「HIGH」設定では中高域周波数帯域で低インピーダンスを通常示すMartin Loganなどの静電型(ダイポール)スピーカーに効果があります。高いダンピングファクターは高周波数帯域の典型的な損失を中和させるのです。低ダンピングファクター「LOW」設定は、高能率設計(例:ホーン型)にとって有効な選択肢かもしれません。これらのスピーカーは一般的な、または高ダンピングファクターのアンプと組み合わせるとサウンドが荒くなったり耳障りになる傾向があるからです。
入力管の差し替えは簡単です。まずアンプをオフにして、ソケットに差し込まれた真空管を交換して下さい。そうすることで、迅速で、簡単に、実用的な調整が行え、あらゆるスピーカーに対するアンプの最適化が可能となります。
OCTAVE新設計の電源部と非常に安定した広帯域出力トランスは、この調整可能なダンピングファクター調整機能を搭載するためにOCTAVEにとって必要不可欠な構成要素です。これらの主要部品はすべて社内で丹念に作られており、最適化されたトランスは製品モデル専用に設計され生産されています。
V110SE: それ自体が特別なものなのです。
オプションのBlack Box / Super Black Box
Black Box技術により、OCTAVEはスピーカーを実際に駆動する能力を向上させるアップグレードオプションです。この柔軟性はOCTAVEブランドの特徴として広く知られています。
アンプのダイナミクス性と音調の安定性は電源供給の安定性と電源供給貯蔵コンデンサの容量に大きく左右されるため、Black BoxとSuper Black Boxはコンデンサの容量をそれぞれ4倍(Black Box使用時)と10倍(Super Black Box使用時)に増量する外部アップグレードユニットとして開発されました。これは、鳴らしにくいといわれるタイプのスピーカーを接続する場合には、とてつもなく大きな効果をもたらします。アンプは極度に低いインピーダンスでスピーカーを駆動でき、スピーカーの能率による問題は軽減されます。
バイアス調整機能
V110SEの出力段はA/Bクラスで操作されるため、調整可能なバイアス制御が必要です。最も洗練され、極めてシンプル、且つ正確なバイアス調整システムは本体のフロントパネルからアクセスできます。外部から正確なバイアス調整できる3回転ポテンショメーターとLEDによる確認方法で出力管を瞬時にモニタリングし、フロントパネルで個々のバイアスの調整が簡単に行えます。測定用のマイクロメーターなども不要で、特別な知識や工具も必要ありません。
正しいバイアスはV110SEの不変の音質に不可欠です。この機能により、真空管の変更やコンディションを確認するのに技術者にサービスしてもらう必要はありません。この使い勝手の良いシステムの精度誤差は±0.5%という正確さです。
電力管理と保護システム
V110SEには電源投入時に典型的な高突入電流が原因となるストレスから保護し、コンポーネント並びに真空管の寿命を大幅に伸ばす多段式のソフトスタート/電源投入保護回路が装備されています。本体はV110SEをモニタリングする保護システムと共に定義された順序で起動し、誤動作が検知されると保護システムが始動、V110SEの電源を落とします。
エコモード
将来を考慮したOCTAVEの特徴には、アンプの電源がオンでも使用されていない場合、熱と不要な消費電力を軽減するために開発された、独自のエコモードという省電力電子回路が挙げられます。この電子システムは電力事情をコントロールし、アンプが10分以上無信号の場合に消費電力を軽減させます。この「スリープ」モードでは、V110SEのアイドリング電流は20W以下です。実質的には本体からの発熱はなく、パワーアンプ部のヒーター電圧と高電圧はオフになっています。V110SEによって信号が検知されると、エコモード回路がアンプを再びオンにさせ、約30秒間のウォームアップ/起動遅延ののち、本体は操作可能となります。エコモードは真空管の長寿命化にも一役買っており、改良された安全性の付加価値がV110SEオーナー様に本体の電源をオンにしたままでもいかなる問題に対してある程度の安全性を提供いたします。
オプションのフォノステージ
V110SEには、MM(47kΩ)又はMC (150Ω)カートリッジ対応のフォノステージ基板を内蔵できます。フォノ基板には、12dB/Octのサブソニックフィルターが装備されています。内部フォノステージの仕様は、パッシブイコライゼーションに基づいており、最高の信号コンディションを実現します。
※ OCTAVEでは、電源部をアースの無い環境に合わせるため、日本用に仕様を変更しています。接続方法によって簡単にグランドループから解放できる設計になっています。
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