A 級トポロジー
A 級トポロジーは増幅動作における最も純粋な形態として広く認識されています。それに対して、現在のアンプの主流であるB 級もしくはAB 級のトポロジーは、交流信号の上半分と下半分を別々のデバイスで動作させる「プッシュプル方式」を採用しています。この時、片方のトランジスタへ動作を切り替えるときにはもう片方のトランジスタは休止状態となります。その切り替え動作時に発生するのが一般にゼロクロス歪みと呼ばれているものです。この時の波形はアンプの出力端子に接続したオシロスコープで観察することができますが、この歪みの量はアンプの動作にかかわらず常に一定です。つまり、出力レベルが低くなるに従ってこの歪の割合は相対的に大きくなります。すなわち低音量の聴取時になんとなく再生音の滑らかさがなくなる…等の状況をもたらします。
一方、A 級トポロジーにおいては交流信号の上半分と下半分を同じ動作をさせて、それを加算することで出力信号を作っています。このため信号の繋ぎ目は滑らかでゼロクロス歪みはほとんどありません。全てのアンプは動作時に若干の歪みを発生しますが、この点は特に重要です。さらに他のトポロジーと比較して、A 級の優秀なフィードバックループの安定性は少量の高次歪曲倍音が発生することを意味します。その結果がより自然で調和のとれた正確な再生です。
シングルエンド(SE)設計
A 級設計の興味深い長所は、シングルエンド設計として一般的に参照される技術と共に単一の出力デバイスのみで回路を構成できることです。これはクロスオーバー歪みの発生がないことを保証しますので、可能な限り再生音の純度が高い方法であると考えられます。HA-200 はステレオ構成で使用時にはフルSE モードで操作します。
A 級のデメリット
A 級アンプにおける僅かな短所は、出力トランジスタが持つ直線性の中央で動作するようにバイアス電流がセット
されなければならず、入力信号の有無にかかわらず常に一定のアイドル電流が流れることになり、電源回路から
常に一定の電力を供給しなければなりません。すなわち電源効率の点では悪い方式と言えます。余った電力は
排熱となり周囲に放散されます。しかし、これは大きなスピーカーを駆動するときに問題になることであって、ヘッ
ドフォンアンプとして使用するときにはそもそも低出力なので懸念するにはあたりません。
定電流出力
A 級であること、シングルエンドでかつバランスモードという特権に加えHA-200 の定電流出力機能は一般に駆動
が困難と言われるヘッドフォン、または周波数スペクトルに応じて不規則な電気インピーダンスを示すドライバー
を駆動することが可能です。定電流トポロジーには、ヘッドフォンのインピーダンスが周波数に応じて変動するの
に合わせて絶えず出力電圧を調節する能力があります。この機能は完全ではないかもしれませんがある程度の
範囲のヘッドフォンに対応します。様々なタイプのヘッドフォンを使用されるリスナーの皆さんにとっては大変現実
的な利点をもたらします。
バランスヘッドフォンモード ※ HA-200 の特別な能力は、2台目を追加し両方を「バランスヘッドフォンモード」にすることにより、聴取できる4倍の出力が得られるということです。この構成で必要なのはバランス接続対応ヘッドフォン、または市販のヘッドフォン差し替え用XLR バランスケーブルです。バランスモードでは、4つのセパレートアンプ(1台につき2組)が音楽信号(右正領域、右負領域、左正領域、左負領域)の4つの位相の駆動に活用されます。
※「プッシュプル」B 級動作と同じ技術が使用されている訳ではないことにご留意下さい。
全てのトランジスタは常に導通電流するためA 級にバイアスされており、左右が反転しているアンプでのみ位相が180 度逆相となっています。このような設計の主な利点は、各々のアンプがボイスコイル動作の半分のみを受け持つことによってボイスコイルのコントロールをより効果的にすることにあります。使用可能な出力電圧が2倍のため、実際の出力は4倍になるのです。お互いのアンプは音楽のダイナミックリアリズムを増やすために反対の位相で操作されることで、スルーレート(増幅の立上り特性)をも2倍にします。音響的には楽器と声が音色の極度のクラリティ―と共に再生され、結果として全く「ゲインフリー」で、サウンドステージも広く深いものになります。信じがたいパワーとダイナミックコントロールによる目覚ましい音楽再生能力はご体感いただくのが一番でしょう。
|